「機動戦士ガンダム THE ORIGIN I『THE 音』トークショー付上映会」は、6月6日(土)に東京・Gibson Brands Showroom TOKYOで開催された。
イベントでは、5.1chで制作された『機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル』本編を再解析し、7.2chにアップミックスした音響で上映。会場には、客席を取り囲むように7つのスピーカーが設置され、劇場とはまた違う空間表現の方法で作品を楽しむことができた。
さらに、本編上映前にはトークショーも実施され、今西隆志監督、音響監督の藤野貞義氏、音楽プロデューサーの藤田純二氏という「音」に関わるスタッフが登壇した。
▲左から、今西隆志監督、音響監督:藤野貞義氏、音楽プロデューサー:藤田純二氏
始めに挨拶があり、藤田氏は「『機動戦士ガンダム』でも音楽制作を手伝わせて頂いて、そのご縁で『ORIGIN』をやることができて喜んでいます」とコメント。
そしてトークショーは、各人の仕事内容の説明から始まった。
まず今西監督は、主に映像作りをしているとのことだが、藤野氏曰く「一人で描いている悲壮な時間が多い」そうで、現在は孤独に第2話の作業をしているという。また、効果音や音楽、キャスティングなどに関しては音響監督と相談しながら進めていくが、時には『機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル』の葬式シーンでの司祭の言葉など、「台詞が足りない」と言われて考えることもあるそうだ。
一方、藤野音響監督は「音」に関する全てをまとめるのだが、実際に音を作るのではなく、今西監督と相談したプランを元にそれぞれの担当と、キャスティングや音楽、効果音などを決めていくとのこと。また、今西監督曰く「地獄耳」だそうだ。
そして、今回レコード会社がBGM作りに関わる前からスタッフの一員として参加していたという音楽プロデューサーの藤田氏は、監督のオーダーを作曲家にわかりやすく伝えて調整していくという。「音楽家と、絵作り・総合的な音作りの人との調整をする仕事」で、全てを仕切る監督、音の全て仕切る音響監督と比べて仕事の範囲は狭いが、そこを「いかにきちっとやるか」だと語った。
また、現在の仕事を始めたきっかけについても語られ、今西監督と藤野氏は元々映画が好きだったのだが、それぞれ「職がない時代で、アニメ業界に入ったのは偶然」、「会社がアニメの音響の仕事をやるようになったから」だったという。今西監督は実写映画の効果音作りをしたこともあるそうで、藤田氏が「雪山でマイクを持たされて凍えてたこととかあるんですか」と尋ねると、「それはどっちかというと、アルバイトをしていたNHKで、ロケ専門だった頃のADの仕事」ということだった。
そして藤田氏は、学生の頃からクラシックが好きで、レコードを買わずに済ませるためにレコード会社に入った、というエピソードも明かされた。当時は数も募集も少なくなかなか受からなかったのだが、最後の最後にキングレコードに入れたのだという。ちなみに藤野氏と藤田氏の付き合いは、既に40年ほどになるとのことだった。
続いて、今回は「音」のイベントということで「今までの仕事で『音』について印象に残ってること」を聞かれると、今西監督は本イベントに触れて「主題歌も5.1chの音源があるが、普通は聞くことができない。でも、今では7.2chで聞くことができる」、藤田氏は「録音はステレオなのにTVも劇場もモノラルで、録音したままの音が流れないという時代が長くあったが、今はそのままの音で聞くことができる。さらにそれを良くしようという試みもあり、作品をより楽しく見ることができるのは素晴らしい」とコメント。これに藤野氏は「今回は逆で、もっと良い音で聴けるから不思議な感覚」と付け足し、今西監督も「デジタル化は早いですよね。2、30年で変わっていく。昔はカミソリでテープ切ってたんですもんね」と同意した。
さらに、藤野氏は「東京ディズニーランドの映像と音を見た時に、こんなものどうやって作るんだろうと、自分もやっていながらわからなくて衝撃だった」と、時代の流れの速さについて語った。また、「どんどん音が増えていくので、どう整理するかが大変」ということで、「“てんてんてん”(小数点)がついて頭の中が“てんてんてん”ですけどね」と言って会場を笑わせる場面もあった。
そして『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』における「音」について、今西監督と藤野氏は、『機動戦士ガンダム』の頃と比べて「武器の音などを迂闊に変え過ぎると、がっかりしてしまう人もいる」が、「映像の技術も進んでいるので、昔の音をそのままつけてしまうととても聞けるものではない」といったことから、「昔の名残を残しながらも、新しい違和感のないものをつけていく」ことを考えているという。例えば、「自動車ならガソリンの音でバリバリといくのではなく、未来だから電気や水素なのでは」などと相談しながら「ちょっとは力強い音、未来的な音」を意識したそうだ。また藤野氏は「コロニーでどんな音がするかなど誰にもわからないから、それをもっと新しい形で表現しようとすると、世界も進んでいるから追いついていかなきゃいけない」と語ったが、「デジタルという扱いで音を作っていくのは結構大変で苦労している」とのことだった。
一方BGMについては、「血沸き肉躍るような、燃えるような曲をつけたい」ということに加え、オーケストラを使っているのはいつも同じだが「2015年のガンダムなんだ、というのも音に出さなきゃいけない」、「これからまだ続いていくので、テンションが落ちないように」といったことを意識して制作しているとのことだった。
この日登壇者の3名は一足先に7.2chを体験したということで、その感想を藤野氏は「劇場ともまた違う感じで、オーケストラの広がりがものすごく綺麗。くまなく自分の周りを埋めてくれるという感覚が嬉しかった」、藤田氏は「ここは家より大きいけど劇場よりは小さいので、生々しい感じがした。市販の機械でこれだけできるのだと、身近に感じて欲しい」と語った。また、今西監督は「家にあればいいですよね(笑)」と言い、「(『機動戦士ガンダムUC』ストーリー担当の)福井晴敏さんは自宅の地下の音響システムがすごくて、喜ぶだろうなと思ったらもうここに来たということだった」と語った。
そして最後に、今年秋にイベント上映が実施される『機動戦士ガンダム THE ORIGIN II 哀しみのアルテイシア』について「今緻密に打ち合わせをしているところなので、もうすぐです」、「音楽だけでも楽しんで下さい」とコメントがあり、トークショーは幕を閉じた。
また、ONKYOショールーム1階右奥の壁にはイベント登壇者のサインが書かれているので、近くに行った際はぜひとも立ち寄ってみよう。
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』は、オリジナルサウンドトラック「portrait 01」とyu-yuさんが歌う主題歌「星屑の砂時計」を収録したシングルが好評発売中のほか、「e-onkyo music」ほかにてハイレゾ音源が配信中だ。
作品を彩る音楽たちを、ぜひともハイレゾの高音質でも楽しんでみよう。
(ガンダムインフォ編集部)
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